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ゲームの対戦記録など

ペルソナ4 ザ・ゴールデン

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2012年発売のRPGであるペルソナ4 ザ・ゴールデン。2020年にSteam版が発売。2008年発売のペルソナ4のリメイク版らしい。

動画サイトでこのゲームの二次創作を見て興味を持ち、Steam版をプレイしてみることにした。ペルソナシリーズは初めて。Steamはサクッと遊べるゲームが多いというイメージだったので、軽い気持ちで始めた。だが実際は予想を大幅に上回る大ボリュームの大作だった。誰もが心の奥に持っているような現実逃避の感情を扱う深いテーマ、テーマに基づき登場人物一人一人に大量に用意されたストーリー、ストーリーを進めて他者との信頼関係を築くことで精神的に成長するゲームシステム、精神的な成長無くして決して勝てない緊張感のあるギリギリのバトル。これらの膨大な要素は繋がっており、このゲームでしか味わえない新鮮な体験を得られる。ボス戦はかなり難しく、時間はかかるが、多くの登場人物に愛着が湧くので、どんな困難も乗り越えて助けたくなる。素晴らしいRPGだった。

 

以下、ネタバレあり。

 

テーマ

テーマは人の感情であり、主に現実逃避の感情を扱っている。多くの人は真実から目をそむけ、自分の見たいものだけを見て生きようとする。真実をごまかす様子を「霧」で表現し、自分の見たいものだけを表す鏡を「テレビ」で表現している。物語は超常現象を利用した殺人事件から始まり、最初は一見 一部の邪悪なものによる悪事を主人公たちが暴いていく物語のようである。だが実際は一連の現象は神が民衆の望みを叶えた結果であり、多くの民衆が抱く現実逃避の感情が生み出したものだった。

「あがいて生きるより、嘘に目隠しされ、騙されて楽しく生きていく… それこそが人間の平穏ではないか」

これはゲームの中の話であるが、実際の現実でも同じことが言える。自分はテレビは見ないが、ゲームやマンガ、動画やTwitterなど、そういったものの中に、自分の見たいものだけを見て現実から逃れるための世界を求めているのではないか。このゲームの主人公たちのように、まやかしを振り切って真実を追うことが出来るだろうか。考えさせられる内容である。

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一人一人のストーリー

本作に登場するたくさんの人物は一人一人が重い過去と辛い現実を抱えている。だが主人公とのコミュニケーションを通して、過去を乗り越え、成長していく。最初はみんな心に霧がかかった状態で、他人に本心をさらけ出すどころが、本人でさえ自分の心に気づいていない。会話によって心の霧を晴らしていき、次第に自分の心と向かい合う強さを身に付けていく。

自らを死神と呼ぶお婆さん。床に臥す愛する夫から忘れられてしまい、夫の死を願った結果、夫は亡くなった。しかしいまここに、若いころの夫によく似た若者である主人公が現れる。主人公との会話を通じて、過去と向き合い、そして乗り越えていく。

殺人事件の被害者である少女の弟。周囲から身内を亡くした可哀そうな子として特別扱いを受けることに違和感を感じる。悲しむことも出来ない自分は冷たい人間なのだろうかと思い悩む。根気よく話してくれる主人公と会話していくうちに、自分は姉の死を受け入れられず心を閉ざしていたことに気づく。

主人公のバイト先のナース。悪女のようにふるまっているが、実は患者との距離感に悩む純粋な女性。精一杯看護した患者は治って退院するか死ぬか。いずれにせよ待っているのは別れ。無闇に仕事に打ち込むが、過労により倒れる。主人公との会話により、自分が何を目指していたのかを思い出していく。

その他たくさんある一人一人のストーリーは単なるゲームのおまけではない。このコミュニケーションによる精神の成長こそがゲームシステムと結びついているのである。

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育成ゲームシステム

本作のバトルは心の中の世界で行われ、精神力がバトルでの強さとなる。そしてその精神力は人とのコミュニケーションによって育まれる。コミュニケーションを得るための様々な条件や、条件を得るにあたっての制限を考察しながら、限られた時間で可能な限りのコミュニケーションを行う。先に進めるためにはお金やアイテムを揃えたりすることも大事なのだが、そればかりに時間を費やしていると強大な敵に立ち向かえず詰んでしまう。

このゲーム、その後の展開がなかなか読めるものではなく、今後どのようなパラメータが重要になってくるかは分からない。それでもその時の状況から最善と思われる行動を真剣に考えて選択し続けていけば、何とか対処できるだろう。逆に言うと手を抜いて簡単に攻略できるものではない。それほどシビアでギリギリなゲームバランスである。

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強敵との戦闘

本作はゲームの最初に難易度を選択できる。難易度の低いものから順にSAFETY, EASY, NORMAL, HARD, RISKYである。自分はRISKYを選択した。何度もゲームオーバーになり、クリアまで150時間もかかってしまったが、他の難易度だともう少し楽かも知れない。

序盤からボス戦はかなり厳しい。何度もゲームオーバーになる。ストーリーのミスリードもあり「これラスボスなんじゃないだろうか」と何度も思った。さらに偽りのエンディングがあり、強大な敵を倒した後のため、てっきり最後だと思ってしまうことも。

本作のゲームとしての醍醐味は強敵との戦闘にある。戦略を持たずに挑めばあっさりゲームオーバーである。何度も挑んで相手の属性と攻撃パターン、威力を調べ、それに対応するための手段を考えなければならない。このゲームは時間制限があるため、いくらでもキャラを強化して相手を倒すということは出来ない。戦闘前の編成、装備、アイテム、ペルソナ合体から戦闘中の戦術に至るまで、緻密に戦略を立てて初めて強敵を倒すことが出来る。

雑魚戦も油断は出来ない。基本はこちらの先制攻撃で1ターンキルを目指す。相手の攻撃になると一撃でゲームオーバーになってしまうこともある。その場合、セーブも自由ではないのでかなり前からやり直しになってしまう。1ターンで倒せなければそのまま逃げるのも大事。例え今回逃げたとしても、相手の弱点属性とかを知ることが出来れば、次回はかなり有利に戦える。

RPGの戦闘としてはかなり難しい方に入ると思う。だがそれがいい!!

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最後に

プレイ時間150時間でやっとたどり着いたゴール。ラスボスを倒すのに10時間かかった。苦労したその最後に相応しいエンディングだった。全てのモヤモヤしたものが完全に解明される。心の霧を晴らす物語のテーマとプレイヤー心理との完全なシンクロは見事であった。

ぜひ色々な人にプレイしてもらいたいRPGの傑作である。